結論を3行で
1. 経済産業省の推計では、2040年に事務職が約440万人余剰、AI等を使える人材が約340万人不足するとされています。
2. ただしこれは一定の前提を置いた推計であり、「事務の仕事が消える」という意味ではありません。
3. 障害者雇用の現場を調べた公的な調査では、デジタル化について「特に影響なし」と答えた企業が最も多くなっています。
「AIの活躍が理由で、事務職はなくなると聞いた」
「今から事務を覚えて、意味があるのだろうか」
A型事業所で事務の仕事をしようと考え始めた方が、こうした迷いを持つことがあります。ニュースやSNSで「なくなる仕事」の話を目にする機会が増えていることが背景として考えられます。
この記事では、公的機関が出している推計と調査をもとに、事務の仕事とAIの関係をお伝えします。札幌市東区のA型事業所ToTeTuで事務代行・記帳代行の業務を検討している方が、判断の材料を持てる状態になることを目指しています。
先にお伝えしておくと、この記事は「事務職は安泰です」と結論づけるものではありません。都合のいい話だけを並べても、判断の材料にならないためです。
「AIの活躍が理由で、事務職はなくなる」と言われる根拠を確認する

まず、この話がどこから来ているのかを確認します。
経済産業省の推計が示している数字
経済産業省が公表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」では、2040年時点の職業ごとの需要と供給が推計されています。
この資料によると、事務従事者は需要1,039万人に対して供給1,476万人で、約440万人の余剰が生じると推計されています。一方、AI・ロボット等利活用人材を含む専門職は、需要782万人に対して供給443万人で、約340万人の不足と推計されています(出典:経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)について」2026年3月)。
「事務職はなくなる」という話の背景には、こうした推計があります。数字としては小さくありません。
これは条件付きの推計です
ただし、この数字の読み方には注意が要ります。
同じ資料には、この推計が産業構造審議会の「第4次中間整理」における2040年の産業構造推計を前提としたものであり、十分な国内投資や産業構造の転換が実現する場合の推計であることが記されています。
つまり、決まった未来を示したものではなく、ある条件が揃った場合にこうなる、という試算です。これから15年近く先の話でもあります。
数字が示しているのは、消滅ではなく需給のずれです
もう一つ、見落とされやすい点があります。
この推計でも、2040年の事務従事者の需要は1,039万人と見込まれています。ゼロになるという推計ではありません。余剰と言われているのは、需要に対して供給が多い状態を指しています。
そして同じ資料が、AI等を使える人材については逆に不足すると推計しています。事務の仕事が消えるという話ではなく、必要とされる人と、実際にいる人の組み合わせがずれていく、という話です。
障害者雇用の現場では、デジタル化はどう受け止められているか

推計とは別に、実際の職場を調べた調査もあります。
企業15,000社に聞いた調査があります
障害者職業総合センターが、2023年に企業を対象とした調査を行っています。一般企業と特例子会社を合わせて15,000社に調査票を送り、一般企業3,693社、特例子会社235社から回答を得たものです。
デジタル技術の進展が障害者雇用に及ぼした影響について、企業がどう答えたかが集計されています(出典:障害者職業総合センター「AI等の技術進展に伴う障害者の職域変化等に関する調査研究」調査研究報告書No.177)。
最も多かったのは「特に影響なし」でした
一般企業の回答で最も多かったのは、これまでの影響について「特に影響なし」で、51.9%でした。プラスの影響があったと答えた企業は約22.4%です。
今後の見込みについては、プラスの影響があると考える企業が約39.7%、特に影響なしが24.3%でした。
障害者雇用を専門に行う特例子会社では、これまでの影響についてプラスと答えた企業が約52.8%、今後の見込みでは約54.8%となっています。
「奪う技術」としてだけ語られているわけではありません
この調査で目立つのは、マイナスの影響を訴える回答が中心になっていない点です。
インターネット上では「AIが仕事を奪う」という語られ方が多くなりますが、実際に障害者を雇用している企業に聞いた結果は、それとは違う形をしています。半数の企業がこれまでのところ影響を感じておらず、今後についてはプラスを見込む企業が増えています。
ただし、この調査は2023年時点のものです。生成AIが広く使われるようになった時期と重なっており、その後の変化までは含んでいません。
AIに置き換わりやすい事務の作業と、そうでない作業

ここまでの2つの資料を踏まえると、「事務職」とひとまとめにして考えるより、作業の中身で分けて考えるほうが実態に近づきます。
手順が完全に決まっている入力・転記
決まった場所から決まった場所へ、決まった形式で写す作業は、機械に任せやすい部類に入ります。
経済産業省の推計で事務従事者の供給が需要を上回るとされている背景にも、この種の作業が効率化されることが含まれていると考えられます。
確認と、品質を担保する作業
一方、出てきたものが正しいかを確かめる作業は、性質が異なります。
入力そのものが速くなっても、間違いが混ざっていないかを確認する必要は残ります。むしろ、処理の量が増えるほど確認の重みは増します。
例外への対応と、段取り
実際の仕事では、手順どおりに進まない場面が出てきます。書類が想定と違う形で届く、必要な情報が欠けている、といったことです。
そこで誰に確認するか、どの順番で進めるかを判断する部分は、手順書に書ききれない部分です。事務の仕事の中身は、入力だけで構成されているわけではありません。
札幌のA型事業所・ToTeTuで積む事務の経験は、どういう種類のものか

そのうえで、ToTeTuの業務がどちらに近いかをお伝えします。
外部のクライアントから受けた実案件を担当します
ToTeTuの事務代行・記帳代行は、外部のクライアントから実際に依頼を受けた業務です。練習用に用意された課題ではありません。
納期があり、相手がいる仕事なので、想定どおりに進まない場面も含めて経験することになります。業務の実際については、A型事業所の「実案件」って何?札幌・ToTeTuの業務の実際について解説でお伝えしています。
はじめての方はペアで作業し、ダブルチェックを通します
事務代行・記帳代行の業務では、はじめての方はペアで作業を進め、ダブルチェックのもとで仕上げます。
これは、先ほどお伝えした「確認と、品質を担保する作業」にあたる部分です。自分の手を動かすことと、内容を確かめることの両方に関わる形になっています。
マニュアルに沿って、手順を守って仕上げます
作業はマニュアルを見ながら進めます。手順が文字で残っている環境で、決められたとおりに仕上げる経験を積むことになります。
この積み重ねが履歴書に書ける実務経験になるという考え方については、A型事業所で「履歴書に書ける実務経験」を積むという考え方——札幌・ToTeTuの実案件業務で詳しくお伝えしています。
AIと事務職の関係について先のことは分からない、という前提で今できること

最後に、この記事の立場をはっきりさせておきます。
推計は推計であり、断定はできません
2040年に事務の仕事がどうなっているかを、確かなこととして言える人はいません。経済産業省の推計も、前提を置いた試算です。
ToTeTuとしても、「事務職は今後も安泰です」とお伝えすることはできません。分からないことを分からないままお伝えするほうが、判断の材料になると考えています。
分からないからこそ、履歴書に書ける経験を作っておく
先が読めない状況で確かなことがあるとすれば、職歴の空白は埋まらないまま時間が過ぎる、という点です。
「事務職はなくなるかもしれない」と考えて動かずにいる期間も、経歴の上では空白として残ります。何かを担当した記録が残っている状態と、何も残っていない状態では、次に動くときの選択肢が変わります。
A型事業所に通った後に一般就労を目指す場合の見通し
A型事業所で経験を積んだ後、一般企業への就職を目指す方もいます。
ToTeTuでは、履歴書の作成や面接対策のサポートを行っています。詳しくはA型事業所から一般就労へ——札幌・ToTeTuの就職活動サポートについて解説をご覧ください。
AIと事務の仕事に関するよくある質問
Q1. 事務職はいつなくなるのですか?
なくなる時期を示した公的な資料はありません。経済産業省の推計は2040年時点の需要と供給を試算したもので、需要そのものは1,039万人と見込まれています。
Q2. パソコンが得意でなくても大丈夫ですか?
ToTeTuでは、パソコンの基本操作ができれば、最初のスキルとしては十分としています。作業を進めながら少しずつ慣れていく形です。事務に必要な感覚については、「事務職に就きたいけど自信がない」あなたへ。札幌のA型事業所・ToTeTuで身につく、事務の足腰となる3つの感覚でお伝えしています。
Q3. 障害者雇用の仕事がAIに置き換わるという話は本当ですか?
障害者職業総合センターの2023年の調査では、デジタル技術の進展について「特に影響なし」と答えた一般企業が51.9%で最も多く、プラスの影響があったと答えた企業が約22.4%でした。少なくともこの調査の時点では、置き換わりが中心の結果にはなっていません。
Q4. ToTeTuでは事務以外の業務もありますか?
ToTeTuでは、事務代行・記帳代行のほかに、動画制作、デザイン、EC販売、軽作業などの業務があります。また、施設外就労として飲食の仕事もあります。見学の際に業務内容を確認していただけます。
AIと事務職に関する数字を確かめたうえで、自分の次の一歩を決める

経済産業省の推計では、2040年に事務従事者が約440万人の余剰、AI等を使える人材を含む専門職が約340万人の不足とされています。ただしこれは一定の前提を置いた試算で、事務の需要そのものは1,039万人と見込まれています。
障害者職業総合センターが2023年に企業へ行った調査では、デジタル技術の進展について「特に影響なし」と答えた一般企業が51.9%で最も多く、今後についてはプラスの影響を見込む企業が約39.7%となっています。
事務の仕事の中身は、入力だけではありません。確認と品質の担保、例外への対応と段取りが含まれます。ToTeTuの事務代行・記帳代行は、外部のクライアントから受けた実案件を、ペアとダブルチェックを通して仕上げる形で進みます。
先のことは断定できません。ただ、判断の材料は数字で確かめられます。そのうえで、自分がどう動くかを決めていただければと思います。
ToTeTuは、地下鉄東豊線「東区役所前駅」から徒歩3分の場所にあるA型事業所です。業務の中身を実際に見てみたい方は、見学のお申し込みをお待ちしています。電話(011-788-6567、平日10〜17時)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。